[/table] |
|
戦争は終わった。だがレダの民の苦しみは終わったわけではなかった。 |
|
レダ王家の滅亡により、レダの支配下にあった各地の勢力(地方領主や自由都市、あるいは無頼集団のようなものまで含む)が統制を失い、各々がかって気ままに領民を支配するようになったのである。法は失われ、争いが日常化し、治安は著しく悪化した。領主の圧制は留まるところを知らず、各地で市民や農民による反乱が繰り返された。支配者側の過酷な弾圧が火に油を注ぎ、旧レダ領内の混乱は日に日に悪化する一方であった。そして、こういった不安定な政情が土台となって、後に大きな災いとなる「ガーゼル教国」が成立してゆくのである。 |
|
|
③ガーゼル教国の誕生 |
|
現在の地に王都が定められて600年、「黄金の都」と形容されるほどに栄華を誇ったレダの都も、クラニオンによって完全に破壊し尽くされ今や見る影も無い。かつては10万とも言われた市民もその多くは戦火を逃れて各地へ離散し、いまだ瓦礫の街に暮らしているのは行く当てを持たない貧しい人々か、後は盗賊くらいなものである。レダの民にとって第一の聖地であった土の神殿(レダ神殿)は王都の100里ほど東、パンタナ・ラグーナにその威容を誇っていたが、これもまた王国と一体であった土の神官家が滅んだことにより、盗賊たちの巣窟となっていた。終戦の翌年(786年)そのレダ神殿に数人の男女が現れた。 |
|
彼らは神殿を支配していた盗賊たちを抹殺し、数日後には数百名にも及ぶ人々が西方から新たにやってきた。彼らは神殿とそれに付属する設備(住居や田畑など)を整備し、一年後には数千名が暮らす[神殿都市国家]に変わっていた。彼らは古の宗教「ガーゼル」を信奉する人々で、西方のカナン帝国に属する自治領[ゾーア]から逃れてきた人々であった。彼らはレダ神殿の跡地に古代神ガーゼルを唯一神とする宗教国家を建設したのである。しかし世界はこの辺境の地に起きた出来事について、いまだ何一つ気づいてはいなかった。 |
|
<キーワード⇒ユトナ暦786年:レダ神殿の跡地にガーゼル教国が成立> |
|
|
④ガーゼル教と古ゾーア人/800年にわたって差別・抑圧され続けてきた人々 |
[table=100%,#ffffff]パンタノ(州)の西隣にあるゾーア(州)は峻厳な岩山が連なる不毛の大地である。カナン帝国(カナン王国とこれを宗主と仰ぐバージェ・ソフィア・アヴァ・ティラードの4王国で形成される)は頑なにガーゼル神を信仰しユトナ教徒への同化を拒む「古ゾーア人」を「民族の保護」という大義名分の下に不毛の土地に強制的に「隔離」している。つまり、カナン帝国の人々にとって「ゾーアの谷」と言えば、流刑地と同義語であった。 |