| ん、なんだよ? |
| いやだね、お前の顔なんて見たくもない |
| ああ、もういやだぁ、あ、ん、やめろっていってるだろっ |
| 女なんてそうやってちょっと強引にすればごまかされるとでも思っているのか |
| けど、あいにくだったな |
| あたしは、久しぶりにかまってもらったからって、 |
| すぐにシッポをふるバカ犬じゃない |
| たくさんかまってもらえないと納得しない賢い犬なんだからな |
|
| すう…くそ、三日ぶりの感触だ…おまえのにおいだ、…すう |
| お前は仕方ないというけどな、こっちだってこの三日間大変だったんだぞ |
| 家から一歩もでなくても、大変なことはあるんだよ |
| おまえがそばにいなくて、ずっと一人きりで、頭がどうにかなりそうだった |
| だからって、ついていくわけないだろ、ロシアになんてあんな寒くて遠いところ |
| …おい、腕の力が緩んでいるぞ、もう手なずけたつもりなのか |
| だいたいどうしておまえがそんな遠くに行かなきゃならないんだ |
| 仕事なんて国内のオファーだけ請けてればいいだろ |
| これ以上有名になる必要なんてないって |
| 最低限の食い扶持だけ稼いでさ、あとはずっと二人で家に引きこもってればいいんだよ |
| 心配するなって、なにがあってもおまえはあたしが守る |
| …それが、彼女を不幸にしてまであたしが手に入れた権利だ |
| そのための力だってある、これは母さんがあたしにくれたものだ |
| 今はすごく感謝している |
| 腕、またゆるんでいるぞ、…思い出したのか? |
| ん、そうだ、そうしてろ、どうせおまえはあたしがいないと生きていけないんだから、 |
| ま、あたしはおまえがいないとなにもできないけどな |
| ん…なんか眠くなってきた、 |
| なにしろお前がいない間も言いつけどおり、ちゃんと一日10時間弾いてたからな、 |
| えらいだろ、ほめろよ、ついでに褒美もよこせ |
| そうだな、んじゃあこういうのはどうだ、 |
| あたしが寝ている間、ずっとだきしめて、ずっとだぞ、 |
| 私がおきたときいなくなってたら、ゆるさないぞ、…あ |
| ん、これだ、お前に包まれている、この感じがいいんだよ… |
| これでやっと、安心して眠れる… |
| ん、おやすみ |
|
| …なあ、もうどこにもいかないよな? |
| いや、だから出張とかそういう意味でなくて、おまえはもう…あたしのものだよな? |
| あたしだけ、のものだよな? |
| そんな簡単に信用できるか、口だけならなんとでも言えるだろう |
| そうだな、なら言葉以外でも証明して見せろ |
| ただ、抱きしめているだけじゃなくて、さ |
| その、なんていうか、つまりだな、もっと強く、もっと激しく、…しろ |
| おまえがいなかった三日間全部埋め合わせしろ |
| 三日三晩ずっと愛し続けろっ |
| もう寝かしてくれって、勘弁してくれって、あたしが音を上げるまで…しろっ |
| …眠いよ、けどそれがどうした、寝るのか、するのかなんてそっちで決めろ |
| こうして、お前に抱かれているなら、あたしはどっちでもいい |
| あ…ん…ふふ… |